戦後に語られた凄さ。国境や人種を超えた人間への愛。『ビルマの竪琴』【読書屋!】
どうも、ケスイケリーガです
この小説が1947年に書かれたと考えると凄いというか驚くしかないと思うばかりです
竹山道雄『ビルマの竪琴』の紹介です
時代背景に驚く
この小説が書かれたのは1947年。
終戦が1945年ですから、戦後復興のまっただ中といえるでしょう
誰もが絶望や悲しみを経験し、その傷も浅い中、前を向いて生きていこうとしていた時代でしょう
その時代に戦時中の日本兵が人種や国籍を超えた生きざまが描かれたこの小説は、おおくの日本人に誇りと勇気を与えたことは簡単に想像できます
小説の内容も現代に生きる僕らが読んでも素晴らしいと思うものの、当時を生きた人々はなおさら素晴らしいと思ったに違いありません
「日本人なら」という表現が適切かはわからないですが、是非とも一読したい小説です
ざっくりあらすじ
戦争中、ビルマ(今のミャンマーですね)の地で活動していた日本軍の一隊の物語り
心身ともに憔悴して日本へ引き上げてきた日本兵たちの中で一隊だけが明るく元気に帰ってきた隊があった
というのも、隊長が音楽学校出身で、ビルマの地でも合唱をし、前向きに生活していたためだ
この隊に水島という男がおり、彼の見た目はビルマ人にそっくりだった
彼は竪琴を演奏することができ、いつも彼の竪琴に合わせ合唱の練習をしていた
竪琴の音色は隊の疲れを癒し、水島の人柄も素晴らしく、隊には不可欠な男だった
ある日、この隊がイギリス軍の捕虜となった。
彼らは戦争が終わり日本に帰還する日を夢見て、合唱の練習を繰り返し前向きに生きていた
そんな中、捕虜として滞在していた近くで日本軍がイギリス軍に囲まれているということを知った隊は、イギリス軍に頼み込み、包囲されている日本軍に抵抗せず降伏するよう説得する機会を得る
その説得に向かったのが水島であった。
水島が降伏するよう説得するも日本軍は降伏なぞ言語道断という姿勢で交渉はうまくいかなかった
そして、捕虜となっている隊に水島が帰ることもなかった
残された一隊は水島が死んだのか生きているのかもわからなかったが、水島の生還を信じてまった。
水島の生死がわからないまま、捕虜に課せられた労働に従事していると水島によく似た僧侶とすれ違う
水島!と呼びかけても反応がなく水島の見た目もそもそも現地人にそっくりであるため、その僧侶が水島なのか否かが一隊の話題の中心となった
水島が戻る日を信じて捕虜の一隊は合唱を続ける
いつか水島がこの合唱を聞いて戻ってきてくれるはずだと信じたためだ
しかし、結局水島は戻らなかった
ただ水島からの手紙が捕虜たちの元に届いた
水島は包囲された日本軍を説得に失敗したのち、ビルマの山林で一人過ごした。
すると野外に捨てられたままの日本兵や外国の兵士たちの亡骸が至る所にあることを知った
この時、水島は捕虜に戻り日本へ帰ることもできるが、それ以前にこの亡骸を弔ってやらねばと思い、現地に残り僧侶となることを決意した旨が書かれていた
一隊は水島を誇りに思い日本へ帰還する
ざっくり感想
日本人としての誇りを刺激される小説だった
戦時中のことが書かれているが、悲惨な印象を与えない文章の雰囲気で、隊の暖かみと水島への想いがストレートに伝わってくる
水島の行方や隊を去った理由を読書にもなぜだろうと考えさせながら、ラストの水島からの手紙のシーンとなる
その理由が想像以上に美しく人道的で水島という人間の印象を損なわずに描かれることで、「日本人でよかった」に近い誇りのようなものを良い意味で刺激される
戦後のあの時代に、国境や人種を超えて人間への愛を描いたこの小説の凄さに圧倒される。
これは本当にオススメです。名作ですがまだ読んでない方はぜひ!
それでは、グッバイ!
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