蛇の世界への誘い!川上弘美の芥川賞受賞作を読む!『蛇を踏む』【読書屋!】
どうも、ケスイケリーガです
私の大好きな作家の一人川上弘美さんの『蛇を踏む』の紹介です
この本は「蛇を踏む」「消える」「惜夜記」の3作からなり、どれも川上弘美の世界観が色濃く出ている作品だといえますねー!
川上弘美さんってどんな人
川上弘美さんは僕の大好きな作家の一人です
『神様』という短編集で第一回パスカル短編文学新人賞を受賞したのを皮切りに、数多くの文学賞を受賞している方です
特に、芥川賞を受賞した『蛇を踏む』、谷崎潤一郎賞を受賞した『センセイの鞄』は代表作といえるんじゃないでしょうか
川上弘美さんの小説はよく動物が出てきます。
デビュー作の『神様』では熊が、この「蛇を踏む」ではもちろん蛇が。
しかも、この動物たちのセリフはいつも人間離れした品があり、同時にどこか儚さを持っているように感じます
”蛇を踏んでしまってから蛇に気づいた。秋の蛇なので動きが遅かったのか。普通の蛇なら踏まれまい。蛇は柔らかく、踏んでも踏んでも霧がない感じだった。「踏まれたらおしまいですね」と、そのうちに蛇が言い、それからどろりと溶けて形を失った。”
冒頭で蛇が主人公に踏まれてしまうシーンの描写だが踏んだ方にも焦りがなくゆったりと構えている感じがする
そしてなにより、蛇のセリフである
「踏まれたらおしまいですね」この言葉が、この後の展開の根底に残り続ける。
全体的に落ち着いた雰囲気の文章なのですが、描写1つ1つに吸い込まれてしまう魅力がある作家さんです
ざっくりあらすじと感想
主人公が踏んでしまった蛇が人間の形をして、主人公の家に住み着くこととなる
確かに蛇なのだが、主人公が仕事から帰ると人の形になり食事が用意されている
主人公とおしゃべりをしながら過ごすのだ
そのうち蛇は主人公に蛇の世界へ来ないかと誘うようになる
蛇の世界にいけないと拒絶する主人公に対して蛇は何度もお誘いをする
ある日、家の中のいたるところに蛇の気配がするようになり蛇の世界に主人公を連れ込もうとする。
主人公も蛇の世界も楽かもしれないと一時思ってしまうが、やはり蛇の世界へは行けない、蛇の世界などないという
主人公の周囲の人々にも蛇との付き合いがある人がいて、その人たちの描写もされる
特に、主人公の勤める数珠屋の奥さんは若い時からずっと蛇との付き合いがある
蛇は奥さんにも蛇の世界に来ないかと誘ったというが、奥さんは拒み続けた
すると誘いは無くなったが、時間が経った今考えると蛇の世界に行っておけばよかったと主人公に語る
奥さんの蛇が亡くなる頃合いになって奥さんの生気はどんどん希薄になっていく
蛇が無くなったのちに奥さんは蛇のことは忘れられない、今蛇の世界へ誘われたら行ってしまうだろうという
主人公の蛇もしつこく主人公を誘い続ける
蛇の誘いに抵抗することは、主人公が心のどこかで感じる甘えや依存心への抵抗であり、抵抗することは主人公の自律心を意味する
全体の雰囲気はゆったりとしているが、蛇の気味の悪さが妙にリアルで、そのリアルさに影響を受けるかのように、主人公の中にある自我の揺らぎが明確に見えてくる
ここでは紹介しないが、本書に収められている「消える」「惜夜記」も含め、川上弘美の世界観にどっぷりはまってみてはいかがだろうか。
それではグッバイ!
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