拒食症の少女の「食」という生存行為への抵抗!人間の生がリアルに描かれる『肉骨茶』【読書屋!】
どうも、ケスイケリーガです
高尾長良『肉骨茶』の紹介です
拒食症がテーマの小説。読後の感想はただただ「おえっ、人間って怖い。」なんて思ってしまいました
この小説と作者について
新潮新人賞を20歳という若さで受賞した当時の話題作
もちろん、20歳での受賞は最年少受賞でした
148回芥川賞候補にノミネートもされた小説で、20歳が書いているとは思えない内容と筆力に驚くばかりです
ちなみに、作者の高尾長良は当時京都大学の医学部に在学中だったそうで、相当頭の良い人なんでしょうねー
ざっくりあらすじと感想
主人公の赤猪子は17歳の少女
拒食症であることを除いては普通の女の子
「食べること」に対する恐怖心を常に抱き「食べること」を拒む
食べたとしてもすぐにトイレに駆け込み戻してしまうので、病的なまでに痩せてしまっている
痩せる彼女を心配し、周囲の人々はもっと食べるようにと言う
その言葉が彼女を苦しめる
親と一緒にきた海外ツアー旅行で赤猪子は脱走を計画していた
そして、脱走は上手くいく
現地に彼女の脱走を手伝ってくれた旧友がおり、親から離れることに成功する。
しかし、その旧友が用意した赤猪子を匿う家で、「肉骨茶」という食べ物に出会い、そして、もてなされる。
「肉骨茶」を食べなければならない状況に追い込まれ、それはつまり彼女にとって、恐怖の天井を突き破るかのような事態に陥る・・・。
"「飲みこめ!全部飲みこめ!」だが歯型を取るときのように詰め込まれた骨付き肉に食い入った歯は嚙みくだくことさえできず、赤猪子は呻きながら臭い肉を苦心して吐き出した。"
登場する人間の生々しさが精緻に描かれていて、しかも、普段は目を背けたり隠したくなったりする「人間の美しくない部分」がやけにリアル。
美しくないところこそが人間を人間足らしめていると言わんばかりの描写をする
その描写のリアルさと主人公の赤猪子(あかいこ)の「食べること」に対する恐怖心と食事を勧める人たちとの狭間で恐ろしいほどに揺れる心が見事なまでに波長が合い、読者を不思議な物語の中に落とし込む
人の善意は時に善意の対象者を苦しめる。
善意に苦しめられたことは誰もが一度はあるのではないだろうか。
例えば、生魚が苦手な人にとって、ごちそうとして寿司がもてなされる時は非常に困る状況に陥るだろう。
善意の暴力と人間の「食」という生存行為が見事にシンクロして描かれる面白さがある
この作品を当時20歳で書きあげたことがただただすごいと思う。
人間をよりリアルに捉えたい方にはオススメです、それでは、グッバイ!
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