自転車でどこまでも。高校生の心情が描写される羽田圭介のロード小説『走ル』【読書屋!】
どうも、ケスイケリーガです。
今回紹介するのは羽田圭介『走ル』
高校生の心情がリアルに描かれるロード小説です!
作者の羽田圭介さんってこんな人
作者の羽田圭介といえば、又吉直樹さんが『火花』で芥川賞を受賞した時に『スクラップ・アンド・ビルド』で同時受賞した方です。
当時、異色な雰囲気を醸し出しながら多くのバラエティに出演していました。芥川賞受賞の連絡を待つ際のデーモン閣下のメイクは話題になりましたよね。
本書『走ル』は『スクラップ・アンド・ビルド』よりも前に書かれている小説です。
ざっくりあらすじと感想
ビアンキというロードバイクを手に入れた高校二年生がビアンキとともに自転車旅に出るロード小説です。
高校二年生がビアンキというロードバイクで国道4号線を北上する。
最初は、すぐ帰るつもりで、午前中の授業だけサボろうという気持ちでビアンキを漕いでいた。
ビアンキがあまりにもよく走り、彼の気持ちも昂ってしまい、どんどん北上していく。
彼が持っている携帯電話には、彼女や友人からのメールが入る。
突然いなくなった彼を心配している友人たちには、自分がいまビアンキで自転車旅に出ていることを告げる。
はやく帰ってこいといわれながらも彼は自転車を漕ぐことに、より遠くへ行くことに憑りつかれているように走る。
一方、彼女には嘘をつく。体調が悪いが故にデートに行けなくなったと嘘をつく。自転車で旅に出ていることは秘密にして。
この小説の特異であり優れているところは、ロード小説に携帯(メール)という要素を上手く取り入れたことだ。
実際は東京から離れ自転車旅をしているが携帯(メール)の存在によって東京の友人たちと自分が東京にいるようにメールではやりとりをする。
彼は携帯の電源を切り続けメールに返信しないという選択肢もあったにも関わらず、メールに毎日返信していく。
それは、東京の友人たちとの関係性を、自分から切り離すことができない高校二年生の在る種の幼さのようなものがうまく描写されている。
確かに、私が高校二年生の頃は、ようやく買ってもらった携帯電話でクラスメートや部活のメンバー、小中学校時代の友達とのメールが楽しかったと同時に、そこでの関係性が非常に重要で、何よりも優先させてメールをしなくてはならないという強迫観念に近いものすら感じていた覚えがある。そのメールの内容が驚くほど無意味で内容の無いものであっても、大切なものだったのだ。
高校二年生の繊細な人間関係と自転車を漕ぎ遠くへ行っている自分の2つの軸が絶妙な絡み合いが鮮明に描かれる。
高校二年生の子供でもあり大人でもある部分の揺れをロード小説の形でうまくとらえています。高校生の自分に戻る気持ちで読むのもオススメです!
それではグッバイ!
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