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異世界で思う自分自身の存在意義。苦くもリアルな青春小説『ボトルネック』【読書屋!】

どうも、ケスイケリーガです

米澤穂信『ボトルネック』の紹介です。

米澤穂信さんの小説はどれも面白いのですが、この小説はちょっとダークな雰囲気なんです

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<米澤穂信の小説に関する記事はこれ!>

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ボトルネックというタイトルについて

「ボトルネック」という言葉の意味を知ってますか

 

ボトルネックとは、ビンの首の部分のことなのですが、その形から意味が転じて以下のような意味で用いられる言葉です

 

【ボトルネック】瓶の首は細くなっていて、水の流れを妨げる。そこから、システム全体の効率を上げる場合の妨げとなる部分のことを、ボトルネックと呼ぶ。全体の向上のためには、まずボトルネックを排除しなければならない。

本書より抜粋

 

物語の中でこの言葉が非常に意味を持ったキーワードとなる。

主人公は自分自身のことをボトルネックだと思ってしまい、自分はこの世に必要でなかったのではないかという葛藤に襲われる様が描かれる。

 

ざっくりあらすじと感想

この物語は高校1年生の男子高校生が主人公。

彼の家は両親の仲が非常に悪く、母も父も不倫をしており、世間体を失うことを避けるためだけに離婚をしていないような夫婦だ

 

兄はバイクの事故で亡くなっている

 

いわゆる「幸せな家庭」の対極にあるような状態だった。

 

さらに、彼は中学生の時に付き合っていた彼女を事故で失っている

福井県東尋坊という海岸沿いの崖から転落したのだ。

 

その東尋坊で彼女の弔いをしていたところから小説は始まる。

 

 

東尋坊で死んだ彼女の弔いをし、家路に着こうとした瞬間に主人公の彼はふらっと意識を失ってしまう。

 

目覚めたところは彼が暮らしていた世界とは少しずつ何かが異なる世界だった。

 

彼が目覚めた時、そこが彼がいた世界とは別世界であることを理解していなかったが家に着くと見知らぬ女がいた。

 

その女は彼の家の住人であると主張し、彼もここが家だ主張する。

 

そして、次第に相手の言っていることが嘘ではないと理解せざるを得ず、彼女が彼の姉であることを認める

 

というのも、彼の両親は彼が生まれる前に一人の女児を流産で失っていたからだ

 

目の前にいる女と流産となった女児が彼の中で結びつく

 

それは同時に、彼は流産で女児が亡くなった世界でのみ存在する人間であり、その彼が流産で女児が亡くならなかった世界にきてしまったということを悟る。

 

彼は元の世界と目の前の世界を比較すると彼の周りの事象が元の世界よりも良い環境であることに気付いていく。

 

この2つの世界の違いは彼が存在するか否かだけであり、その差によって2つの世界の良し悪しに影響が出ていると認識する。

 

それはつまり彼にとって残酷な事実を突きつけることとなる。

 

彼が存在しなかった方が世界は良くなる、彼が存在すると世界は悪くなるという事実を目の前に突き付けられたのだ

 

姉の存在への嫉妬なのか羨望なのか、少なくとも彼の存在は姉の存在よりも劣った結果をもたらしているという残酷さが眼前にそびえ立つ

 

 

私たちは日々生きている中で、「私なんかいない方がいいんじゃないか」と思ってしまうことがある。

その気持ちは非常に苦しくやり場のないが、あくまで疑問や想像の域を出ないで済む。

 

しかし、この小説の主人公はその思いを現実として突き付けられ、それと向き合わなくてはならない。その残酷性と直面した主人公の思考・言動を描いたところにこの小説の面白さがある

 

まさに、彼は「ボトルネック」だったのだ。

全体の向上のためには、まずボトルネックを排除しなければならない。

 

"失望のままに終わらせるか、絶望しながら続けるかの二者択一。そのどちらもが、重い罰であるかのように思われてならなかった。自分で決められる気がしなかった。誰かに決めてほしかった。"

 

明るい雰囲気の本ではないですが、米澤穂信『ボトルネック』読み物として面白くオススメです!

それではグッバイ!

 

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