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超能力を無効化する超能力が生み出す設定の妙技『愚者のスプーンは曲がる』【読書屋!】

どうも!ケスイケリーガです。

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面白い小説を見つけてしまいました。

桐山徹也『愚者のスプーンは曲がる』です。

2017年の「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉作品として出版された小説です。

※隠し玉作品・・・「このミステリーがすごい!」大賞に応募された作品の中から大賞にはならないが、内容は面白く今後に期待できるものを隠し玉として出版している(ケスイケリーガ見解)

 

ストーリーの舞台設定がうまい!

この小説にかんしてはストーリーの基盤となる設定が小説の面白さのほとんどを決めたんではないかと思っています。この小説を特徴づける一番大事な設定として「超能力」が存在する世界を舞台としたこと。

 

誰もが超能力を持っているわけではなく、超能力を持つ人間は限定的であり、超能力を自覚する人も自覚しない人がいる設定です。

 

本書の中では超能力という言葉で表現されていますが、どちらかというと特殊能力とイメージしたほうが近いように思います。たとえば、液体の水温を自由に操れる力や毒が効かない力、透視する力など多様な特殊能力が登場します。

 

さらに、その特殊能力を持つ人間はなんらかの代償をもつという設定になっています。たとえば、熱いものを食べられない代償、常に頭痛がする代償、笑うことができない代償など、特殊能力と同様様々な代償が描かれます。

 

超能力という特殊な設定を超える主人公の特異な存在!

ぶっちゃけ超能力とか特殊能力を小説の設定にするとなんでもアリの世界になりがちなんですが、主人公が持つ特殊能力によってなんでもアリの世界から地に足の着いた物語になっています。

 

主人公の特殊能力は「主人公の周りでは超能力も代償も無効化される」という超能力なんです。

 

これ思いついたのはすごいですよね。

 

主人公の能力によって、小説の中で多様な超能力を持つ登場人物がいるにもかかわらず、その肝心な超能力を発現させる場面がほとんどないんです。物語の中心にいる主人公が「超能力」という設定を無効化してしまっているからです。

 

つまり、非現実的な設定を主人公の設定によって打ち消し、非現実的な世界が舞台だが非現実的なものは物語の前面に出てこないという構成になっています。

 

 

ざっくりしたあらすじはこんな感じ

主人公はとにかく運が悪い男子大学生の瞬。彼は自分では気づいていなかったが「超能力と代償を無効化する」という超能力を持つ。その代償は「とにかく運が悪い」。

超能力に気付かない瞬は大学入学と同時に上京し、そこで2人の超能力者に襲われる。

彼らにとって「超能力を無効化する」能力というのは非常に危険であり、悪い芽は早めに摘むに限る宜しく瞬を殺すというミッションがあった。しかし、ひょんなことから命拾いした瞬はこの2人が所属する組織にアルバイトとして働くこととなる。

そのアルバイト先で、超能力が絡んだ数々の事件の情報を入手していく。

ある事件に巻き込まれた形で仲間の超能力者が殺されてしまい、その能力者が担当していたミッションを引き継ぐこととなった。

そのミッションをクリアしていくために、瞬が働く組織事務所のメンバーとともに活躍する。

  

終わりに

どのキャラも特殊能力を持っているという点を差し引いても個性的で際立ち、ストーリーも最初の設定さえ受け入れれば非常にシンプルで面白いミステリーテイストになっています。

隠し玉として選抜されただけのことはあります。

面白くてサクサク読める小説を探している方にはオススメです。

 

それでは、グッバイ!

 

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